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 「魔女ってひ弱で陰気なのが相場じゃない?!
     まさか斬りつけて来るなんてありえないわよっ!」
              ────── curryの手記「未来の旦那様へ♥ 」 第325項より抜粋。

 11月2日 ロンドン 晴れ

 その日もロンドンはハロウィン一色で、街中の子供達は色とりどりのカボチャの被り物を頭にのせて走り回り、大人達もそれぞれ思い思いの格好をしていた。
 私もそんな空気にやられてしまい、魔法使いの仮装を楽しんでいたりとしているところ。
 周りの航海者達もどことなく楽しげで、仮装したり祭りのイベント等に参加したリと皆幸せそうな表情を浮べている。


 うん、物語の始まりにはこんな感じがいい。 うん。

 程なくして私は広場にいた。
 広場では流石といった所だろうか、人も溢れバザーや見た事も無いような物で着飾っている航海者達でごった返している。

 この中で、ふと目に留まる女性がいた…
 魔法使いの服を着た銀髪に眼帯の女性、何やらロンドンを拠点に持つ航海者が出展している剣をワクワクした瞳で見つめている。
 剣の名はスキアボーナ。熟練した鋳造職人が鍛える事により、その切れ味は伝説の剣にも負けずとも劣らない物になるというそんな剣。
 彼女のそのまっすぐに剣を見つめる横顔に私は少し魅入ってしまった…

 ここで街を散策していた時に聞いた住人達の声を思い出す。
 「ハロウィンには仮装した人間達に紛れて本物の怪物も現れる」
 どこにでもある噂だと正直馬鹿にしていた。
 思い出すのも馬鹿馬鹿しい話だ。彼女が魔女の格好をしていて、私がたまたまそれを見つめてしまったというだけだのに…

 「ちょっとあなたっ!」

 「へ?」
 またやってしまったらしい…
 私は何かとトラブルに巻き込まれてしまう素質があるようで、この街へ来てからも広場に行くのに犬に追い掛け回されお菓子を無くし、子供達からのいたずらの格好のターゲットにされてと散々な目にあいならが辿り着いた矢先にこれだ…
 まぁ、自分が悪いと言ってしまえばそれまでなのだが我ながら凹める素質だ。

 「あなたよ!あなたッ!」

 「ちょっと試し斬りさせなさい!」

 「はあっ!?」 
 偉い事を言われたもんだ。金よこせ、身包み置いていけ、とは言われた事があるにしてもまさか「試し斬り」とは…

 「だから、そこでいい剣を買ったから試し斬りさせてって言ってるのよっ!!」

 いやいやいや、言ってる事が凄まじい。正論に聞こえてくるのが恐ろしい所だ。
 「斬られたりしたら痛かったり血とか出たり、死んじゃったりするじゃないですかっ!?」

 「大丈夫よ~、その辺は調整するし後でパパッと治してあげるから♪」

 やっぱり本物の魔女ではないのではなかろうか? 簡単に治すとか…って
いきなりっ!?
  「ちょっといきなり斬りつけるなんてっ!」              「んん~、いい切れ味♥ 」

 駄目だ…自分の世界に入ってる様子。
 殺される…一瞬はそう思ったが私の方も冒険で野党に絡まれたり、盗賊団を退治したりと少しは陸戦には自信はある。むざむざ殺されるのを待つだけにはいかない。
 
 反撃開始だ。
反撃っ!
  「親父にも斬られたこと無いのにっ!」             「ちょっと痛いじゃないっ!!」

 広場は大騒ぎだ。そりゃそうだろう白昼堂々イングランドの首都で女二人が決闘(正確には試し斬りとそれに対する正当防衛だが)を行っているのだから…

 「もう、やめーやめー」

 はぁはぁ、何とか助かったようだ…

 「だって痛いんだもん」

 う~ん、撃ち殺したい…しかし、彼女は満足そうな顔をしている。切れ味が良かったのだろう。
 
 「またやろうねっ!」

 そう言った彼女の顔を見ると殺されると思ったはずなのに可笑しな話ではあるが、また実験台になっても…と思えてしまう程の笑顔であった。
 「それはいいんですが、この傷はどうやって治してくれるんです?」

 「ん? んなもんツバ付けときゃ治るわよ」
 
 「・・・・・」

 どうやらというかやっぱりというか、噂は噂であったようだ…

 そこに軍人らしき男が現れた。
 その男は香料商人ではあるが大発見の冒険、大海賊の討伐と全てをこなす男。今や全世界の噂にもなっている男だ。
 「白昼堂々決闘を行っていたのは貴様等か!?」

 「…ええ、その様で」
 無理も無い、あれだけ騒いだんだからこういった展開が無い方がオカシイ。
 「やはりか…ならば一緒に来て頂こう…」

 「あ゙~もう面倒臭いわねぇ! やっちゃうcurry??」

 「やりますかっ♪」
 いつもなら一目散に逃げるのではあるが、どうやら私にも危険な心が芽生えたらしい…
問答無用の攻撃開始
 「ちょっと待て!!」
 ザシュッ!
 「人の話は最後まっ!!」
 ズドンッ!!
 「き、きけ…」
 ドサッ…

 「あらら、気絶しちゃいましたよ」

 「だらしない男ねぇ」
 2:1でやりあったのだから倒れるのも無理は無い、正直言うとこっちだってかなり危なかった。

 「誰がだ…」
 
 「人の話は最後まで聞けと言ってるだろ!!!」
 
 男は気力を振り絞って立ち上がっている、どうやら捕まって牢獄行きという話でもなかった様子だ。

 「フン、まぁいい。実力は見させて貰ったからな…」
 「これから私が引き上げた沈没船の探索を行うにあたり腕の立つ人間を捜していたのだが…」
 「どうだ? 来るか??」

 いきなりの誘いに驚くも、冒険者にとって沈没船はまさに宝箱。

 「いくいくー」
 「お願いします!!」

 「よかろう、では港へ来なさい」
 そこでもう1人探索者が合流しての探索に…
宝箱

 探査終了後また航海者達はそれぞれの航路へと出航していった。
 男はまた新たな発見へと意欲を燃やしている。最後に加わった男は何やら新しい商売に燃えている様子であり、彼女もまたその剣の向け所をを探しているかの様に見えた。

 そして、それぞれが別れの言葉を言い合い去って行った。


 11月2日のロンドンはこんな様子で幕を閉じた。

 結局、彼女は魔女でも怪物でもなかった。
 しかし、彼女が現れると周りの航海者達は明るくなり、口数も増える。
 場の中心には彼女がいて笑いが絶えない。

              ────そう、それはまるで魔法の様。
 
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